2017-08

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第三章 窓辺のともしび 中編 【続・愛の若草物語】

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ただいまの声が夕暮れの静寂を破る。
わざと急ぐ気持ちを飲み込みながら、ベスはゆっくりと玄関に出た。
扉からは外の冷たい空気が家の中に舞い込んで来る。
それはあたたかい暖炉の空気の混ざり合って姉のコートの襟をはためかせた。

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「元気そうじゃない……良かった。」
ジョオは深い愛情の瞳でベスを見つめると優しく抱き寄せた。

ベスは何かを言おうとしたが姉のグレーの瞳が少し潤んでいるように見えて、
ただ黙って姉の冷たいコートに頬をうずめていた。
それだけで十分に幸せだったのである。
エイミーもまた久しぶりに会う母に飛び込むように抱きつくと
この何年かを取り戻すように、いつまでもその腕の中にいた。


「お母さま、ただいま帰りました。」
しばらくしてジョオはメアリーに向き直ると弾む胸を押し隠すようにして言った。
するとエイミーもようやく母の腕から離れ、
レディのようにスカートの裾をつまみ上げると
「ただいま帰りました。」と言いぺろっと舌を出して見せた。

メアリーはジョオを招いて優しく抱擁すると、
ジョオは懐かしい母の香りでようやくわが家に帰って来た実感を覚えた。

「‥少し痩せた?」とメアリーの声。
黙ってうなずくジョオに母は黙って頭を撫でてくれた。
涙もろいハンナはもう横で目を潤ませながらその様子を見つめていた。

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玄関に二人の旅かばんがどさりと置かれて、
マーチの家族は我に返った。
トムはもう自分の仕事を終えて、馬車の方へ駆け出していた。

「トム、一緒に食べて行かない?」
気付いたメグが声をかける。
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「いいよ姉さん、それに今夜は家族水入らずだろう?
兄さんが帰ったらまた迎えに来るからさ。」
御者台に登るとトムはウィンクしながらそう言った。

「…もう、カールに似て気遣いなんだから。」
夕日の去った方へと走り行く馬車を見つめながらメグは言った。
その言葉はまるで昔からの本当の姉弟のようで、
ジョオにはそれがなんだか不思議と嬉しく感じられた。

     *     *     *

久々のわが家の食卓にはもうハンナお手製の料理が並び始めている。
そう言えば、朝からろくに食べていなかった。
ジョオはわが家に着いた安心からか、ようやく食欲を覚えた。
見ると足元には三匹の子猫たちがジョオやエイミーの後をもの珍しそうについて歩いて来る。

「ミルキー・アンったら、また子猫が生まれたの?」
その様子を見ながらエイミーが言った。

「違うの、これみんなリトル・アンの赤ちゃんなのよ。」
ベスが言うとまるで分かってるようにリトル・アンが足元で鳴く。

「じゃあ、知らないうちにまた家族が増えていたのね。」
ジョオが子猫の一匹を抱き上げ、のどをさすってあげると
子猫はジョオの指をなめてくれた。

「でも、それだけじゃないのよ。」
メアリーが微笑むと共に後ろの扉からメグが入って来た。

「……えっ!?」
ジョオは思わず声を上げた。
最後に部屋に入ってきたメグの両腕には2人の赤ちゃんが抱かれていたのである。

「…メグ、それって。」
「そうなの、私たちの赤ちゃんなのよ。」
メグは娘のように頬を染めながら、嬉しそうに答えた。

「私も初めて聞いた時はびっくりしたんだから。」
エイミーは自分のことを自慢するように鼻を高々に上げた。
その様子にベスがくすくすと笑う。

「男の子?女の子?ねぇ、名前はもう決まったの?」
矢継ぎ早に質問するジョオにメグは言った。
「抱いてみて、ジョオ。」

「あら、ジョオなんかに抱かせたらまた石炭入れに落としたりしないかしら?」
エイミーが自分の鼻を触りながら言うとジョオは
「あんたはいつまでもそれを言う!‥もう大丈夫なんだから。」
とおっかなびっくりの手つきでジョオは双子の一人を抱き取った。

「その子は女の子でデイジーって言うの、カールが名付けたのよ。」
「デイジー(雛菊)!あなたの娘にぴったりの名前じゃない。」
メグは幸せそうにうなずいた。

「そしてこっちは男の子のデミ(半分の意)。
デイジーの命の半分をもらって生まれてきたからデミにしたのよ。
でも、とっても泣き虫なの。」
だが赤ん坊はジョオの顔を見上げると声を立てて笑った。

「あら!私はあんたのせいでこの年でおばちゃんにされたっていうのに
何がそんなにおかしいのかしら?」
ジョオがりんごのようなほっぺをつつくとデミは小さな小さな手で指を握り
また嬉しそうに声を立てて笑った。

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「私は”おばちゃん”なんて呼ばせないわ。
”お姉ちゃん”って呼ばせるの。」
すました笑顔でエイミーは旅かばんを開くと中から綺麗な包みを取り出した。

「はい、”お姉ちゃん”からのプレゼントよ。」
エイミーの手渡した包みをメグが開くとそこには
淡いピンクとブルーの小さなリボンが入っていた。

「どっちか見分けがつかないと新米ママが困るでしょ。」
エイミーが悪戯っぽくウィンクすると、そっと赤ちゃんの襟元に巻き付けた。

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「ありがとう、こんなものまで。」とメグ。
双子たちも嬉しそうに声を立てて笑った。

「さぁさぁ、用意が整いましたよ。お食事に致しましょう!」
ハンナの声に姉妹たちがめいめい食卓につく。
あたたかい食卓に家族の笑い声、
この五年の間に自分が忘れていたものがみなここにあった。
なぜ自分はあんなに帰るのにためらいを覚えていたのだろう。
ジョオは席にもたれながらそう感じていた。
ここは私のいた場所、そして帰ってくるべき場所なのだと。

「さぁ、ジョオさん、お腹がすいているでしょう?
たくさん食べて下さいね。」
ハンナの言葉にジョオは笑顔でうなずくとバスケットからパンを取った。


つづく
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● COMMENT ●

デミとデーズィが!!

うわ~楽しみにお待ちしておりました~
家に帰って、抱き合うベスとジョオ。お母様と潤むハンナ…
本当に素敵で暖かくて、素晴らしかったです~。

それに、今回のイラストはいつもに増してさらに素敵なものばかりですね~!
ベスとジョオの再会シーンはカットがちりばめられて、本当に今にも動き出しそうです!
ハンナの表情も、そして寝息を立てる赤ちゃんのデミとデーズィまで!

素晴らしい作品を今回もありがとうございます!

ある名作ファンさん、コメントありがとうございます。
四姉妹勢ぞろいでちょっとお話が長くなってしまいましたが
もうちょっとお付き合い下さいm(__)m
そうそう、「ナンとジョー先生」にも出てきたデーズィとデミの登場は
今回のサプライズのつもりで書きました(^ー^

ちなみにデーズィをデイジーにしたのは書き間違い…ではなく、
花の名前を彷彿し易い表記の方がいいかな・・と思って変えてみました。
でも、あのデーズィですのでご安心下さい(^^

次回は家族の団らんがもう少し続きます。
来週末位までにはアップする予定ですのでお楽しみに(^^

ぉおっ(笑

デミとデイジーが登場とは!(笑
でも確かにジョオ25歳の時にはとっくに生まれてるんですもんね。
ranでは考えつかない(笑)人物とか今後もありそうでますます続きが楽しみです!

Ps ranも年末にはネットにつなげられそうです!

ある名作ファンさん
ありがとうございます。!なかなかうまくいかなくて大変でしたけど
なんとか出来上がりました。そういっていただき恐縮です。v-356
本当は、もう少し挿絵を載せたかったんですけどね。^^;;
>ハンナ
ハンナ好きな者としてはついつい彼女を描いてしまいます。笑
本当はもっと描かなきゃいけない場面がたくさんあるんだけど。
ある名作ファンさんのあたたかなメッセージには、いつも励まされます。
本当にありがとうございますっ。

ranranさん
>とっくに生まれている
原作から考えると、遅いくらいですよね。(笑
どうしてもエイミーを大人にしなくてはならなかったので
このお話は8年後になってしまいました。
でも、アニメのエイミーって7歳なのか10歳なのか
よくわからないんですよね。

>ネット
わぁ! 本当ですか! おめでとうございます~!v-300
ranranさんの復活をお待ちしていますよ^^

●道祖土ranさん
レスが遅れて本当にごめんなさいm(__)m
仕事がキツい中、後編も書いていた為、遅くなってしまいました。

ranさん、時期的にそろそろネット復活なさっている頃でしょうか?
またみなさんと一緒に若草話で盛り上がれたら本当に嬉しいですね(^^
復活記念に一度、チャットなどでもお話したいものです。

>人物
若草キャラは今後もいろいろと出していくつもりでいます。
また、ニューヨークでの生活ではオリジナルのキャラも多く出ますので
結構、みなさんの評価が割れそうで怖いのですが
気持ち良くお楽しみいただけたら嬉しく思います。


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