2017-08

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第三章 窓辺のともしび 前編 【続・愛の若草物語】

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その日、我が家には久しぶりの活気が戻ったようだった。
昔からの使用人であるハンナは白髪が混じり始めたカーリーヘアを
手ぬぐいの中に押し込み、
朝から掃除に、料理にといつも以上に熱心に働いた。

時折、聞こえてくる鼻歌は彼女がご機嫌の時の証で、
それを聞くと三女のベスーエリザベスも心がうきうきと躍った。
曲はいつもベスが弾いて聞かせていた、ハンナお気に入りの曲「子犬のワルツ」だった。

「ピアノで弾こうか?」
と尋ねるベスにハンナは頭を振って、耳を指差すと言った。

「とんでもない!ベスさんの曲はみんなここに入っていますよ。
だから休んでおいて下さい。」
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ベスは元々身体が丈夫ではなく、少しの風邪でも深く長引くことが多かった。
そのせいか、ハンナは何かにつけてすぐ彼女を病人扱いする。
そのくせピアノを弾き始めると誰よりも喜ぶのはいつもハンナだった。

ベスはすみれ色のピアノを優しく撫でると子犬のワルツをそっと弾き始めた。
壁の向こうでハンナの鼻歌が一際大きくなるのが聞こえる。

(ハンナの鼻はまるで楽器ね。)
ベスは小さく微笑むと、ハンナとのアンサンブルを楽しみながら、
久しぶりに家に帰る姉と妹を迎えられる喜びを噛み締めていた。

     *     *     *

メグはお昼を少し過ぎた頃に出て行ったが汽車の時刻には早すぎたのかもしれない。
時計を見るともうかなり経っていた。
外では秋の午後の空気がまるで駆け足のように少しずつ本来の肌寒さを取り戻し始めていた。

ベスがぼんやりとそんなことを考えていると母-メアリーが洗濯物をかご一杯に抱えながら部屋に入ってきた。
「あぁ、一度に家族が増えるって大変ね。」
メアリーは嬉しそうにそう言った。

彼女の足元にはまとわりつくように白い母猫と子猫三匹がじゃれている。
ベスはピアノを弾く手を止めると母猫を抱き上げた。
「ダメでしょ、リトル・アン。
全くあなたはママになっても甘えん坊のままなのね。」

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母親を取り上げられた子猫たちは今度はベスの足元の方に来て
部屋履きのスリッパの刺繍にじゃれついた。

「‥お母様、ミルキー・アンは?」
「ミルキーはあなたのベッドじゃないかしら。」
メアリーはソファーの上でシーツをたたみながら答えた。

ミルキー・アンがリトル・アンを産んだのはジョオがこの前に帰郷して少し経ってからのことだった。
それがつい最近、そのリトル・アンも三匹の子猫たちのお母さんになったのだ。
そして、今回のジョオやエイミーの帰郷。
ベスは指にじゃれる子猫たちをあやしながら、全く嬉しいことは重なるものだと感じた。

「それにしても、唯一残念なのはお父様がいらっしゃらないことだわ。」
ベスは誰に言うでもなくつぶやいた。

「仕方ないわ、今はまだ戦地の復興が終わっていないんですもの。
お父様の腕が必要とされているのよ。」
返すメアリーの言葉もまた独り言のようだった。

建築家の父-フレデリックは南北戦争後、ケガが治すと各地を回りながら
戦火に焼けた街々の復興に尽力していたのだ。
ここの所は特に忙しくなり、家にいる時の方が日に日に短くなりつつあった。
ジョオはきっとさぞ残念がることだろう、ベスの心に姉の笑顔が浮かんだ。

     *     *     *

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「…さぁ、そろそろお帰りじゃありませんか。」
ベスはハンナの言葉にはっとした。
いつしか部屋の中は薄暗くなっており、窓の向かいに見えるローレンス屋敷の白壁が
夕日の色で真っ赤に燃えている。

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それが合図かのようにハンナが手際よく部屋のランプに灯かりを点してゆく。
いつも見慣れた光景なのに今日はなんだか誕生日のように胸が躍るのを感じる。
まるでプレゼントを開けるのを待った子供の頃のような気持ち。

「あっ!」
ハンナが声を上げる。
「お帰りですよ!」

ベスの胸が高鳴る。
それはいつかのクリスマス、父の帰ってきた時と同じような喜びの鼓動だった。
そしてその音は遠く馬車の轍を踏む音と溶け合いながら胸の中に響いて来た。
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つづく
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● COMMENT ●

何よりも作品への愛を感じます。

こんばんは。イラストの上手さとストーリーの自然さはもちろんですが、空気感というか存在感のある世界観を構築している所が凄いです。仮にこの様な物を私が描くとすると(こんなに上手くはいきませんが)相当な時間と試行錯誤が必要だと思いますので、お二人の様な才能豊かな方でも難儀したのではと想像します。この様な力作を無料で観られてなんか得した感じ(笑)。建物や料理等、面倒な所も逃げずに挑んでいる所は見習いたい所です。

●limさん
ありがとうございます、もったいないお言葉恐れ入りますm(__)m
本当に好きな気持ちだけで突っ走っている状態で粗も多いのですけど、
皆さんにあたたかい目で付き合ってもらえて、こちらこそ幸せです(^^
今後、それこそローリーが出てくる前に息切れしないようにしないと(笑)
全て読み終えて「あぁ~面白かった。」と言っていただけるようにがんばります!

limさん、こんにちは。お褒め頂き恐縮ですっ。本当にもったいないお言葉です。
でも少しでも楽しんでいただけているようでしたら、頑張った甲斐がありました。。i-179
今回はさすがに時間がなくてイラストの方は、いっきに書き上げてしまったので、今見ると修正したいところが目に付いて困ります。時間がたたないと気がつかないなんて、自分の悪いくせだなぁと感じながら。i-229
「続・愛若草」は、4年前にはじめる予定でしたが、のびのびになっていたんですが、今回なんとかお話としての全体的なかたちが見えてきました。たぶん普通の名劇作品並みに長い話になると思うので、飽きられなければいいんだけど…。ちょっと心配しております。i-229

>建物…
limさんこそ、いつも細部までとても丁寧に描かれていて
私のほうこそ見習いたいと思っていました。i-260

本当に素晴らしいです!

新作、今回も本当に素敵です~!
ハンナとベスの組み合わせって本当に好きなので、ここでも見られてうれしいです~!

そしてミルキーアンも子猫、孫猫に囲まれて幸せそう~
夕暮れのマーチ家や、料理、そしてラストのベスの笑顔♪
本当に、limさんがおしゃるように、こんな力作を無料で見られて本当に得した感じというか、申し訳ないくらいです~

これからもお話とイラスト、本当に楽しみにしています!

ある名作ファンさん、ありがとうございます。
いかがでしたか?
ある名作ファンさんの愛の若草のハンナとベスのイメージは
崩れませんでしたでしょうか?
そうだったら嬉しいです(^^

次回の4姉妹勢ぞろいの団らんもお楽しみに(^ー^

ある名作ファンさんも、ハンナとベスの組み合わせお好きですか、私もです。^^
あの二人には、なんとも暖かなムードがありますよね。お母さまが完璧な母のせいか、
ハンナの少しとぼけた感じに癒されまくりです。
喜んでいただけて、とても嬉しいです。
ありがとうございます。e-267


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文章は、石神
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