2017-10

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第二章 ふたつの再会・後編 【続・愛の若草物語】 

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=2=

古い樫で組まれたアーチは白いペンキが所々が朽ちて、
その上にある金メッキの【待合室】のプレートをうやうやしく掲げている。
室内はもう既に多くの人々でざわめき合い、再会の喜びが満ち満ちているかのようだった。
そんな中、待ち人はすぐにジョオとエイミーの姿を認め、奥の席から立ち上がると大きく手を振って見せた。
マーチ家の長女メグ-マーガレットである。

数年を経て婚約者カール=ブルックと結婚したメグは既に家を出ていた。
懐かしい歳の近い姉との久しぶりの再会はジョオの心を旧友と会うような感激で包んだ。
メグもまた感慨に満ちた瞳で、遠い場所で夢に向かっている妹たちを代わる代わるに見つめ、
小さな娘たちにするように両腕で招き二人を抱きしめた。

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ジョオはメグに抱かれながらふと彼女の髪から懐かしい家のものとは違う香りを感じた。
それはきっとブルック家のもののはずだった。
昔はそうなることがとっても嫌だったはずなのに…ジョオはなんだかそれが可笑しかった。
そして今はそれがとてもあたたかく優しく、何よりカ強く感じられるのだった。

「…二人とも元気そうね。」
そしてメグはジョオの顔をしげしげと見つめながらメグは言った。
「ジョオは少しやせた?」

「私は全然平気よ、それよりベスは…。」
ジョオがそう言うと、メグはエイミーと顔を見合わせ、少し悪戯な笑みを浮かべた。
「ごめんなさいジョオ、それは口実なの。」

「だって、そうでもしないとジョオはニューヨークから出てこないでしょ。」
エイミーが相槌を打つ。

「今回はどうしてもジョオにも来て欲しかったのよ。」
メグは優しくたしなめるように言った。
「…分かってくれる?」

「いいのよ、私もずっと来てなかったのは悪かったわ。」
ジョオは鼻の頭ををかきながら言った、自分にも少しばつが悪い所があったのだ。

「まァ、珍しく素直なのね、ジョオ。」
とエイミー。
「それともニューヨークでの作家生活がジョオを大人にしたのかしら?」

「‥あんたはロンドン暮らしでも相変わらずね。」
わざと鼻にしわを寄せながらエイミーに向けるジョオ。
メグはそんなジョオの態度に安心したのか、改めて笑顔をほころばせた。

     *     *     *

姉妹たちの話は全くもって尽きなかったが、
メグの導きでようやく重い腰を上げ駅舎を出た。
駅前の往来は行き交う人々に迎えの馬車も多く、駅以上ににぎわっていた。
メグは二人に先立ち、往来の陰に止まっている一台の馬車を指差した。
古いが頑丈そうなその馬車は百姓が使うそれで、荷台にはたくさんの飼い葉が積んであり、
御者座には男が一人、麦わら帽子を目深にかぶり昼寝をしていた。

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エイミーは馬車を見るなり顔をしかめた。
「…なぁに?このオンボロ馬車。
こんなのに乗って帰らなきゃいけないの?
もっと良いのを借りれば良かったのに…。」

そんな妹をたしなめるようにジョオは言う。
「あら、でもこの飼い葉はとっても柔らかそうじゃない。
ブルーミングデールズ(百貨店)にもこんな上等のクッションは無いわよ。」


「‥待たせてしまったわね、ごめんなさい。」
メグの言葉に男は麦わらを取り、上体を起こして言った。

「いいんだよ、姉さん。」
それは燃えるような赤毛の見知らぬ若者だった。
そしてジョオとエイミーの驚きの表情に若者はにこりと笑って見せた。
メグはその様子を優しく見つめながら言った。
「トムよ、カールの弟の。」


「両親が亡くなって兄と姉さんを頼ってこの街に来たんです。」
トムはメグが荷台に乗るのに手を貸しながら言った。

「ねぇ、私のことは覚えてる?」とジョオは待ちきれなそうにたずねた。

「もちろん!魔法使いのジョオさん。‥今はもうジョオ姉さんだね。」
とトムは今度はジョオの手を取りながら言った。
それを聞きながらジョオはなんだか”姉さん”という響きが
くすぐったくも嬉しく感じられた。

「ありがとう、思いがけない新しい弟が出来て私も嬉しいわ。」
ジョオの言葉にトムもはにかみながら嬉しそうに笑った。

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「…ちょっと!」
そのやり取りを遮るようにエイミーが声を上げた。
見るとエイミーは馬車の下でそっぽを向きながら手を差し出していた。
早く荷台に引き上げてくれるように催促しているのだ。

「あれ、エイミーはこんなオンボロには乗らないんじゃないのかい?」
トムは荷台から飛び降りると悪戯そうに言った。

「まぁ、なんて失礼なの!
‥それに第一、ジョオが姉さんなら私だってあんたの姉さんよ。」

「エイミーはエイミーなんだろ、違うかい?」
トムがおどけるように言うと、エイミーはカッとして差し出した手を引くと
顔をそむけてしまった。
トムは笑うと急にエイミーの腰に手を回し、両手でぐっと荷台の上へと抱き上げた。

「ちょっと何するのよ!?」
「さぁさぁ、お嬢さん方、オンボロ馬車で申し訳ないが
そろそろ出発させていただきますよ。」
トムは怒るエイミーを尻目に御者座に飛び乗ると、ぐっと手綱をしごく。
そして短い掛け声をかけるとすぐに馬車は懐かしい街並みを走り始めた。

     *     *     *

そう言えば、ずっと昔の夏の日に少年トムが遊びに来たことがあった。
あの頃はまだあどけなく、エイミーよりも年下のようにも見えたが、
今は背も高く立派な若者に成長していた。
トムはメグの夫、カール=ブルックの年の離れた弟で
今は兄の住むこの街で教師をしながら暮らしているという事だった。

「懐かしいでしょ、エイミー。昔良く遊んでもらったものね。」
メグがくすぐるような目でエイミーを見ている。

「…そうだったかしら?」
エイミーはまだ怒っているのか、そっぽを向いたまま関心無さそうに答えた。
その演技のような仕草を見てメグがクスクスと笑う。
トムもにこやかに笑いながら馬車を走らせていた。


日は大分傾き、西の空の果ては早くも暖かい色に染まり始めていた。
秋の夕焼けが走るように空を染め上げていく。
ジョオは黙って夕空の方向に流れ行く雲を見ていた。
懐かしい街の景色はどこかピースの無くなったパズルのようにしか見えなかった。

そして、我が家に向かう道に差し掛かった時、ジョオは少し胸の高鳴りを覚えた。
懐かしいローレンス屋敷-。
夕日を浴びた白い壁はまるで燃えているかのように真っ赤で、
日陰の闇とのコントラストが一層際立って見えていた。
ジョオは自然な表情を努めていたが、自分の顔が強張っているのはもう分かっていた。
そしてジョオは思った。
自分の中に止まった時間はまだ動いていないことを。

そんなジョオを無視するかのように秋の日はもうかげりを見せ、
夕焼けが遠い夜の帳に溶けてゆく。
もう懐かしの我が家の居間の窓からはランプの明かりが灯るのが見えていた。


つづく

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● COMMENT ●

まさかのトムが!!

第2話、前篇の成長したエイミーも違和感なくてさすがだなあと思っていましたが、
まさかのトムまで!!
本編でなぜかトム、チョイ役ながらも好きだったので登場嬉しいです~。
それにしても前篇といい今回といい、キャラが本当に自然に成長していてすごいです。
それに、お話と絵が掛け合うように進んでいくのがいいですね~。
本当に小説とその挿絵みたいです~。

マーチ家に帰ったら何が待っているのか、次回も楽しみにしています!

素敵です^^

第二章、とても楽しく読ませて頂きました!
本当にアニメの続きを小説にしたみたいで…私は昔、続・若草で
エイミーが12歳の頃の生意気さがなくなっておとなしくなったのを
ちょっと残念に感じてしまったのですが、このエイミーは昔の面影も
残した女性になっていて素晴らしいと思いました^^
りんさんの挿絵のエイミーもとってもチャーミングで! 
アニメオリジナルキャラのトムの登場も嬉しいですね。なんだか、
この「続・愛の若草」のエイミーとお似合いな気がします♪ 

前回は紛らわしい事を書いてしまってすみません;
りんさんと石神さんによるこの続・愛の若草は、同じ若草ファンとして
たまらなく嬉しいです。拝見することが出来て幸せです!
これからもおふたりによる四姉妹のその後がすごく楽しみです。
さりげなく、後編に入るアイキャッチ的なものもニヤリとしてしまいます^^

トムとエイミー


ある名作ファンさま
ありがとうございます。あたたかいお言葉に感謝です!
先週は、二人とも風邪をひいてしまったので、今回アップできるか
心配だったのですが、なんとか出来上がりました。
今回はお話が出来上がる前に絵を描きだしてしまったので
漠然とした挿絵になってしまいました。時間があったら
もう少しお話にあわせた挿絵を追加していきたいと考えていますi-179
トムは、溌剌としていていい子ですよね。私も結構好きでした。
それに描いているとどんどん愛着が湧いてくるから不思議です。

>何が待っているのか、
ジョオにとっても思いがけないこと(?)かもしれませんi-179

いよさま
いよさんどうぞお気になさらないで下さいねi-201
私達の想像する大人エイミーが、同じ若草ファンのいよさんが思い描く
エイミー像に近かったら、それは本当にうれしいことだなぁと思いますi-237i-178


アニメのエイミーってツッコミにみせかけて実は、ボケのような感じがありますよね。
そんな彼女のおもしろさを引き出してくれる、コミニュケーションが上手な友達が
いると楽しい場面ができないかなぁとi-179
いいコンビになるといいんですけどねi-234e-69

>アイキャッチ
気が付いてもらえて、嬉しいー! i-237
ありがとうございます。はい、CM明けのあのイメージで作っています。
不出来なのでこれじゃあ伝わらないだろうなと思っていただけに本当に嬉しいですi-178

石神さん、りんさん、こんにちは。
オリジナル続編、大変楽しく拝見させていただいています。
こうしてお二人が腕をふるっておられるのを拝見でき、そのこともとても嬉しく思います。若草愛ここに復活!ですね。
石神さんの繊細巧みな情景描写と、りんさんのあの若草世界そのままのイラスト。
レディ・エイミーの登場はたまりませんでした~v
まるでアニメ小説を読んでいるかのうようです。
他のキャラも楽しみでなりません。
これからも、愛のつまった作品群を心待ちにしております。

みなさん、ありがとうございますm(__)m

■ある名作ファンさん
ご感想、ありがとうございます。
トムだけじゃなく、愛の若草で登場したキャラを出来るだけ
全員出したいと思っています(^ー^
もちろんトムも今回だけでなくしっかり活躍させたいと思います。
今後の展開もどうぞお楽しみに(^^

■いよさん
ご感想、ありがとうございます。
エイミーは僕は愛の若草の頃のジョオとの掛け合いが好きなので
気を使いながら、なるべくそのイメージを壊さないように書きました。
苦労した所なので喜んでもらえてとても嬉しいです(^^

でも、エイミーはコメディエンヌにも、飾り物のお人形にもするつもりはありません。
今後出てくる(と思う)彼女の美しさや強さの部分も楽しみにしていただけたら
と思います(^^

■Sさん
拍手コメントありがとうございます。
あはは、このタイミングでの登場はやはりそう思われちゃいますよね(^_^;;
エイミー共々、トムも愛すべきキャラに描けたら良いのですけど(^^

■Nさん
拍手コメントありがとうございます。
お楽しみいただいているようでこちらも嬉しいです(^^
”その瞬間”が来る時をぜひお楽しみに(^ー^

■夏ミトンさん
ご感想、ありがとうございます。
レディ・エイミー登場の回、お楽しみいただけたようでとても嬉しいです(^ー^
エイミーは今後も核になる登場人物、
みなさんのイメージを壊さないようにしつつ、これからも新しい魅力を引き出していきたいものです(^^


*さて次回はいよいよベスが登場し、久々に4姉妹が一同に会します。
久しぶりの家族の再会の情景をどうぞお楽しみにお待ち下さいm(__)m

レディエイミー

夏ミトンさま
こんにちは、あたたかなコメントをありがとうございます!e-53
8年後を描くとき、四姉妹の中でもビジュアル的に一番変化するのがエイミー
なので、結構苦戦してしまいました。i-229
若草に対する愛情だけはあるつもりなのですが、技術がついていかないので
裏方では、毎回大騒ぎしています(笑

できればエイミーには、毎回衣装チェンジしててみたいんですけどね。i-179
きっと可愛いドレスが似合うでしょうねv-353


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Author:石神弘一&りん
世界名作劇場の『愛の若草物語』の
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創作小説「続・愛の若草物語」は
文章は、石神
絵は、りんが担当


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